少し前の事になりますが、この夏、晴れて大学院での課程を修了しました。
日本の方から、イギリスの大学と大学院を比べて「違いは何?」と聞かれる事が多かったのですが、答えはもちろん、大学やコース、環境、年齢によって違うと思いますが、私自身が実際経験したことを比べて、少し語ってみることにします。
一言で言うと、大学は、のびのびと自由に制作でき、なによりも「自分の個性」を伸ばしてくれる場所。それに対して大学院では「他人」を納得させる事の出来る、理論のしっかりした研究と制作をする所で、精神的なプレッシャーを日々感じながらも、同じ状況にいる他の生徒の研究に対する真剣な姿勢がとても刺激になりました。
自分だけの研究の内容を、毎週違った先生に発表し、戻ってくるそれぞれの違う返答。人の意見は皆違うものだから、その中から自分が正しいと信じた選択をして進行をコントロールするのもすべて自分。迷っている時間もなく、進んで行くことが必須だし、厳しい意見にも落ち込んでいる暇はなく、ある意味タフにならなくてはならない。
「タフになる事が制作をする上で本当に良い事なのか?」などという疑問を持つことはしばしばありましたが、そこで立ち止まっては遅れるだけ。必要なのは、自分の研究への信念を強くもって、ただ前に進んで行くこと……これはある意味、イギリスの学生生活の中で「訓練」されたことでもありました。
人生にはいくつもの悩み、迷うことがあるかと思いますが、時にはこのように、悩んでもどんどん進んで行ってしまえば自然と解決される事ってあるんだなぁ、などと、大人になってからの勉強は、色々なものが同時に見えて来ました。
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修了間近になって、研究をさらに進めるかどうかを大学の時の先生に相談しに行ったことがあるのですが、その時先生が言われた事は、
「人生は、長い。作品は、あなた自身しか持っていない経験等から創造されるものです。また、人は年齢ではありません。先日イギリスである作品の発表をしたアーティストの女性は80歳でした、でも彼女は、とても若い。 あなたももっと年齢を重ねて、一人の人間としての経験が充分になった時にまた、研究を進めることにしなさい。それが何年後になったとしても、決して遅いという事はないのです。」というお言葉です。
誰もがそうだと思うけれど、20歳前後の頃は、なにかしたくて、でも、何が自分に一番合っているのか分からなくて、焦りもある、そんな時期でした。今は、10年経って色々な事が分かって来ているつもりでも、少し年上の人から見たら、まだ何も分かっていない状態かもしれません。
気持ちや体力の事もあるけれど、年齢というものは本当に、自分次第です。この先も色々な場面に出会うと思うけれど、イギリスの大学で勉強した月日は、かけがえのない私の経験の一つ。今後も先生の言葉を心に、自分で選択をし、それを信じて頑張って行こう、そんな事を思いながら、卒業式を無事に終える事が出来ました。
以下は、校内の写真。
大学のスローガン?「We are arts」
友達と語り合った、学食。
授業前。毎週プロのアーティストが来て、レクチャーをしてくれました。
スクリーンを使って100人以上の前で行なうプレゼンテーションは、いつも気合いが入りました。
教室の片隅。
長く語ってしまいましたが、これを読んで下さっている方の中で、大人になってからでもいつか留学したいなと考えている人がいたら、私の経験からでも今後お話して行けることがあればいいなと思っています。
何かを始めることは何歳になっても遅くないだろうという考えを、心のどこかに留めておいて下さったら、嬉しいです。
それではまた!